止まるな
6月27日
朝、ジャルガルに感謝の言葉を述べて僕はチタの街を後にする。
チタの街で彼らに言われたことがある。それは、チタから次の街のウランウデまで止まるな、ということだ。
何故かというと、この区間の人々は危険だと有名で、二年前に日本人ライダーが殺害された場所でもあるからだ。
この話は僕ら海外ツーリングを行う人の間でも有名です。昨年にはこの事件を受けて行われたWTNJ主催の海外ツーリングにおいての安全対策というイベントに僕も参加した。
チタからウランウデまでの間、僕は一日で走り抜けるつもりだった。その距離、600キロ以上。信号のないロシアの道なら問題ない距離だと思っていた。しかし、この日の僕は走り出してから何故か体調が優れなかった。
途中、休んでいると夫婦でモンゴルからウラジオストクまで車で帰るところだという夫婦にコーヒーとパンをいただく。少し気分がよくなる。
しかし、やはり走っては休み、走っては休む。どうやら一日でウランウデまでつくのは無理そうだ。ならばカフェ併設宿に泊まるしかない。
宿はないかとカフェを尋ねたら、何と結婚式のイベントを行っていた。僕はこのカップルと家族に君も是非参加して欲しいと誘われた。
「僕は宿を探している。すみませんが、僕は参加出来ません」と言うと、カップルの親族の一人が僕に宿への地図と目印を書いて渡してくれた。
一直線で30キロ先のガソリンスタンドの横だそうだ。この距離なら30分もしないうちに着く。
この区間で人に何かに誘われても絶対についていかないと思っていたが、カップルも親族の人も明らかに幸せオーラを出していて危険人物に見えない。宿の場所も分かったし、僕が参加することでカップルの幸せに貢献できるなら良いかと思って、僕は式に参加した。
ジュースを飲んで、食べて、新郎のお母さんと和やかにダンスしたり。
暫くの間、楽しい式のイベントを僕も一緒に過ごしました。彼らに見送られ、僕は宿へ向かって走り出します。
しかし、30キロ走っても宿は見つからない。もう少し走ってみてもやはり見つからない。見過ごしたか?戻るか?進むか?日はだいぶ沈んできた。かなり迷っていたが、僕は野宿という最終手段をとることにした。
僕は林道を見つけ、周りに人影がないことを確認して、すかさず幹線道路から見えない場所へ入り込む。
テントを張り、中に入って、後は誰にも見つからないことを祈っていた。