Ride Beautiful
6月23日
装備の量からして、さぞや体格の良いヨーロピアンなのだろうと近付いてみると、意外と身体が小さい。そして驚いたことに女性の声がします。
中でもいいなと思ったのが、10分ごとに現在地情報をメールで家族に送るアイテムです。僕はWi-Fiスポットをロシアで見つけるのに案外苦労しています。これがあれば、家族の一つの安心要素に繋がるでしょう。
「私のモットーはRide Beautiful。安全に、事故もなく、旅を楽しむこと」
なるほど。Ride Beutifulか。素敵だ。大陸を走り出した初日に林に突っ込んでいる僕には程遠いかもしれないが、僕もRide Beautifulでありたい。
彼女とはモンゴルでのユースホステルの情報を貰ったり、僕が来た道にあったガソリンスタンドやカフェ併設宿までの距離を伝えたりしました。
お互いの旅の無事を祈り、僕らは別れました。
これだけで一日が無事に終わればどれだけ良かったことだろう。その後の僕はあまりにのん気に走ってました。
いつのまにか路面全体が黒く濡れていることに気付いてませんでした。道路の舗装化の仕上げのため、黒い液状のものを道路全体にぶちまいていたのです。僕はあえなく転倒し、数十メートルもの距離をスライドして行きました。
危なかった。もし近くに車がせまってきたらと思うとゾッとする。今回も幸運に恵まれた。
こんな路面を二輪で走るのは無理だ。もはや殺人的だと思う。これなら不整地のままのほうが100倍マシだ。その後の僕は黒い液体がまかれていない路肩を走って何とかその場を抜けた。
しばらくしたら、空の雲行きが怪しくなる。視界が霧に覆われ、雷がなり、大粒のヒョウが降り始める。痛い。もう踏んだり蹴ったりだ。
天気は一時的ですぐに良くなったが、今日はもう疲れた。僕にRide Beautifulは無理そうだと絶望的な気分になる。併設宿を見つけてよく休む。