ハバロフスク郊外の村で
6月17日
そうイゴーリに言われて、彼のお持て成しを楽しむことにした。
まずは料理を揃えようということで、彼らの車に一緒に乗って肉屋と小さな商店に買い物に行く。
肉屋では昨日殺した羊の肉を買う。太もも肉を豪快に包丁でぶった切るのは見ていて面白かった。
商店では米、野菜、スパイス、酒、ジュースを買う。イゴーリはコーカサス地方に住む民族の料理を知っているようで、それを作りたいらしい。彼に任せて僕は適当に店内を見てるだけだった。
必要なものを揃えてロシア式サウナのある場所に行くと、彼の仲間達が既に用意を始めていた。
水を桶に汲んできて、まきを割って、かしの木の枝葉を取って束ねて身体を叩く物を作る。名前は忘れてしまった。
「ロシア人はこれに入って汗を流し、身体に溜まった悪い物もアルコールも全部出すんだよ」
なるほど。ウォッカを飲んでもこれに入れば解決というわけか。
料理は肉をさばいて、焼いて、煮て、水を抜いて、スパイスを加えて、野菜を入れて、炒めて、また煮て、お米を入れて、蒸して、と時間がかかる。
サウナも準備に時間がかかるため、僕はイゴーリの弟達と遊んでいることにした。ゾンビごっこ、トランスフォーマーごっこをして遊ぶ。僕はもちろんゾンビにデストロンを演じる敵役だ。子供と遊ぶのは楽しい。彼らの想像力は羨ましい限りだ。
そうこうしているうちに、まずはサウナが用意が出来た。はたしてどんなものかと思って中に入ってみると、第一印象は割と普通なサウナだなと思った。しかしイゴーリが後から一緒に入ってきて、正しい楽しみ方をレクチャーしてくれた。
彼は桶に入った水をすくって、火で熱した石にそれをブチまけた。すると一気に水蒸気が沸き上がり、室内に満ちる。これを食らうと体の中まで熱気が入り込んで、一気に汗が噴き出る。一瞬、たまらず外に出たくなったが、イゴーリにかしの木の枝束で身体を叩かれると、葉と枝の間に起こった僅かな風に癒されて、何とも身体がリラックスする。結局、これを3、4回繰り返して、僕はロシア式サウナを大いに堪能した。
サウナから上がったらエスニック料理が完成していた。これは何て表現すればいいのだろう。辛いとも甘いとも言えない。色々なスパイスが混ざって風味が香ばしい。羊の肉はそれら香りによく合って柔らかく美味しい。
大量にあるので、何時間もかけて食っては休み、飲んで食って休みを繰り返した。
19時くらいになってようやく料理を片付け、今日の寝る場所を紹介された。イゴーリのおじさんの家で、そこの2階のベッドで寝ていいそうだ。
そのあとは彼のお兄さんも来て、お互いの文化のこと、アメリカのこと、これからの僕の旅のことなど、また色々話す。
イゴーリはロシアのポップミュージックをギターで演奏してく歌ってくれて、それを英語に直して僕に歌詞を教えてくれた。
今日の経験は、まさに貴重な経験の連続だった。ロシアに来て良かった。